WHOや欧米を中心とする世界の各国は、「緩和ケア」の導入を積極的に導入しようと努力してきました。それは、「緩和ケア」が、人間らしい質の高い生活を送るためには不可欠のものであるという認識からです。
「緩和ケア」はがんによって引き起こされる様々な苦痛から、患者さんを解放しようとするもので、そのためにはまず身体的な痛みの緩和が欠かせません。
しかし、日本においては「緩和ケア」は、がんの末期に行われるものという認識や、「がん疼痛治療」に用いられる医療用麻薬への誤った考え方がまだ残っているようです。また、「痛みはがまんするもの」という国民性もあってか、日本は先進国の中で最も医療用麻薬の消費量が少ない国の一つとなっています。
がん患者さんの「体と心の痛み」の緩和には医療用麻薬の正しい普及が不可欠です。医療用麻薬はオキシコドンが使用できるようになった2001年から徐々に普及してきていますが、医療用麻薬に対する偏見と誤解は強く、使用状況に劇的な変化はみられていません(表)。
日本における医療用麻薬の種類別消費量の推移
(出典:「がんの統計 2022」)